- BEYOOOOONDS: 1st Album
- Release Date: 2019.11.27
- Oricon Weekly: #3 / Billboard Japan: #6
Album Review
Track By Track |
① OOOOOVERTURE|② アツイ! |
③ ニッポンノD・N・A!
④ 高輪ゲートウェイ駅ができる頃には |
⑤ We Need A Name!
⑥ そこらのやつとは同じにされたくない |
⑦ きのこたけのこ大戦記
⑧ 小夜曲”眼鏡の男の子” |
⑨ 眼鏡の男の子 |
⑩ 恋のおスウィング
⑪ 文化祭実行委員長の恋 |
⑫ 元年バンジージャンプ |
⑬ 恋愛奉行 |
⑭ GIRL ZONE
⑮ 都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて |
⑯ Go Waist
⑰ 伸びしろ 〜Beyond the World〜
BEYOOOOOND1St
Album Review
ハロプロ新兵器のプログレッシブ・アイドル「BEYOOOOONDS」は信頼度激高!
つんく♂のハロプロ総合プロデュース退陣以降にデビューしたこぶし/つばきファクトリーは、ダダ余りの研修生をまとめてデビューさせただけのお安い即席ユニットのイメージがどうも拭えなくて、個人的にはつばきのお嬢様JK/JD感は好みではあるけども、そのあまりにも内輪向けすぎるベクトルにどこか釈然としない気持ちもあって・・・。そこへ令和元年にハロプロが送り出すこの新グループ:BEYOOOOONDSはちょいとワケが違うわっ!
BEYOOOOONDS(以下、ほとんど「ビヨ」と書きます)の特徴として真っ先に挙げられるのがパフォーマンスに演劇を取り入れているところ。ほとんどの楽曲にセリフパートが設けられてて、曲によっては寸劇的でもあり、ハロプロ的には決して未知なるスタイルではないし、むしろ演劇や舞台・ミュージカルが大好きなアップフロントらしいのよね。セリフのレコーディングには演出家まで呼んできて指導してもらうほどの徹底ぶりなの。
娘。コンにオープニングアクトとして出演した時の、まだデビュー前のビヨの複雑なパフォーマンスに映った記憶がずっと残ってたんだけど、その後デビューに向けて徐々に正体を露わにし「歌」「ダンス」そして「演劇」の3要素が織りなす新鋭的なパフォーマンスを披露するビヨをいつしかアタシは「プログレッシブ・アイドル」と呼んでみたくなったのね。
楽曲を手掛けるのは星部ショウを中心に三浦徳子・児玉雨子・前山田健一・大森靖子・福田花音といったつんく♂退陣以降の主要作家陣がほぼ総出演で(いないのは中島卓偉クンくらい?)、時事ネタやワードを盛り込んで令和元年の一瞬を切り取るという、今作には刹那的でありつつも元気でハチャメチャな楽曲がズラリ。なのでつんく♂楽曲、特に声帯摘出以降の普遍性に満ちたモーニング娘。の楽曲とは対照的と言えそうなところもビヨの特徴。
演劇志向なアップフロントと非つんく♂連合作家陣、アレンジャー、コレオグラファー、演出家も加えた頭脳の結集とも言えるこの新兵器:BEYOOOOONDSは、もしかしたらハロプロ外にも何かしらの影響を及ぼすんじゃないかと思わせる威力を秘めてそうで信頼度激高よ!
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- 90
- 傑作
- 名作
- 神作
BEYOOOOOND1St
Track By Track
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① OOOOOVERTURE
- 作曲:加藤裕介 編曲:加藤裕介
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② アツイ!
- 作詞:星部ショウ 作曲:星部ショウ 編曲:朝井泰生
ドキドキワクワクな序曲に続く実質のオープニング曲はドラム以外全て生楽器によるヘヴィ・メタルで、クラシカルなピアノソロから怒涛のメタルへ突入するあたりが「X Japan」を彷彿させるわね。MVをよく見るとXネタが一瞬あるし、ダンスも両手でXのポーズも作ってるしで。ピアノを披露しているのは小林ほのぴ。Rec音源でも実際に弾いてるわ。
それはそうと曲中で「ジャンプジャンプジャンプ」と煽ってるけど、ご存知の通りハロプロは「2020年よりライブ会場でのジャンプ行為を禁止する」という声明を出したばかり。こんなジャンプ推奨曲を作っておきながら今さら飛んじゃダメってw
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③ ニッポンノD・N・A!
- 作詞:野沢トオル 作曲:星部ショウ 編曲:星部ショウ
- コレオグラファー:熊谷拓明
デビュー・シングル2曲目に収録の90年代J-POP系の元気ハツラツ・ダンスチューン。同時期に流行っていたTV番組のコーナーをパロったセリフパートも盛り込み、和を重んじるあまりそこからはみ出る事を良しとしない日本人を1人残らずビヨがメッタ斬りっ///
逆説的に既存のアイドルの概念を破るというビヨの意志とも受け取れ、新時代「令和」のアイドルシーンを牽引する気満々の気迫は既存のハロプロユニットのデビュー時のそれとは桁違い。ビヨに遺伝子情報を書き換えられた者から覚醒していく時代。それが令和よ!?
ちなみに、作詞を手掛けてMVにも出演してる野沢トオルって方は(険しい顔してると思ったらクルッと回って笑い出すオッサン)ビヨの演劇面を指導されてる俳優/演出家で、古いヲタには「トオルちゃん」でお馴染みの方。2002年のモーニング娘。のミュージカル「モーニング・タウン」にも出演していて、劇中やそのサントラCDには彼が歌うソロ曲「トオルちゃんは銀行マンの歌」まであるっていう。
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④ 高輪ゲートウェイ駅ができる頃には
- 作詞:星部ショウ 作曲:星部ショウ 編曲:清水信之
- Performed by CHICA#TETSU(一岡伶奈・島倉りか・西田汐里・江口紗耶)
2020年春に開業予定の山手線の新駅名称という最新固有名詞を早速お頂戴したビヨ内ユニット「CHICA#TETSU」の新曲。「”〜できる頃には”ってことはあと半年たらずで過去の話になるじゃん」というツッコミは野暮。これはアイドルとして存在できる人生のほんの一瞬の景色の記録。今しか味わえない刹那的な感情を噛みしめるのもビヨの楽しみ方なの。
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⑤ We Need A Name!
- 作詞:星部ショウ 作曲:星部ショウ 編曲:前嶋康明
- Performed by 平井美葉・小林萌花・里吉うたの
ビヨ内ユニット「CHICA#TETSU」「雨ノ森 川海」のどちらにも属さないハロプロ “ONLY YOU” オーディションからの追加メンバー3人による初ユニット曲は「ユニット名くれ!」と懇願する自虐ソング。こんな曲を作ったからにはそう簡単にユニット名は決めないでねw ライブ披露後に「ユニット名サプライズ発表」とかいうおサムい展開はご法度よ。ビヨの可能性を一気に広げた3人。個性を尊重しつつ、でもユニット名はしばらく放置で!
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⑥ そこらのやつとは同じにされたくない
- 作詞:福田花音 作曲:大森靖子 編曲:大久保薫
- Performed by 雨ノ森 川海(高瀬くるみ・前田こころ・山﨑夢羽・岡村美波・清野桃々姫)
ビヨ内ユニット「雨ノ森 川海」による新曲。既発曲「GIRL ZONE」といいこのユニットはイキってる女子がテーマなのかしら。アイドルから作詞家へと転身された元アンジュルム:福田まろ先生が手がけたのも納得。現役時代は誰よりもイキりまくっていたまろ先生ならではの、アイドル経験者の視点で描かれたアッパーソングよ。この曲のみセリフがないわ。
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⑦ きのこたけのこ大戦記
- 作詞:前山田健一 作曲:前山田健一 編曲:前山田健一/徳田光希
世の中の様々な対立をきのことたけのこの戦いに例えてお子様にもわかりやすく説いた、のが逆にこっ恥ずかしいw、前半のハイライトとも言える6分を超えるヒャダ子の大作。北欧メタルをベースに曲調が二転三転するという組曲的な構造に加えて演劇要素が今作中で最も濃いという、歌×ダンス×演技の3要素が織りなすビヨのプログレッシブ性が最も体現されたと思われる1曲よ。(ダンスは現時点では未見なので)
あとこれもしかして「CHICA#TETSU」と「雨ノ森 川海」が戦ってて、名無し募集中。。。の3人が中立みたいな設定になってる? まだ全員の声を聞き分けられるわけじゃないんだけど、なんとなくそんな気がするわ。
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⑧ 小夜曲”眼鏡の男の子”
- 作曲:星部ショウ 編曲:加藤裕介
次曲のプロローグ的な1分半ほどのピアノ独奏曲。弾いているのはもちろん小林ほのぴ。今作でほのぴが実際に弾いてる楽曲は②⑤⑦⑧⑯の5曲。アタシほのぴがいなかったらここまでビヨを好きにならなかったと思う♡
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⑨ 眼鏡の男の子
- 作詞:星部ショウ 作曲:星部ショウ 編曲:大久保薫
- コレオグラファー:熊谷拓明
追加メン3人が加入する前からハロコン等で披露されていたデビュー・シングルの1曲目は、通学途中の電車内で毎朝遭遇するメガネ男子に恋する女子達を描いたテクノ歌謡。最後には彼女アリだと判明し一同ズッコケるというオチまで盛り込んだ、歌×ダンス×演技の3要素が絶妙に絡み合う、こちらもビヨのプログレッシブ・アイドル性が色濃い1曲よ。
メンバー扮する役柄が肝で、デビュー時点でおおよそのキャラ設定が完成したというのはなにかと自己アピールしやすいはずだし、セリフでもメンバーの本名で呼び合うので女子の大群の中身を見分けるのが苦手なアタシにもこの設定は顔と名前の一致を助けてくれたわ。ただし追加3人にはセリフはないけれど、ま、この子らはセリフなくても強烈なのでw
「○○してるんでしょ?」「してるっ!」
「戦意喪失・・・○○にはかなわな〜い!」
「まさか○○○○○? ズコーッ!」
日常生活やSNSでも使える汎用性が高そうなセリフパートが満載なので、こっそりとハロヲタをアピール、もしくはハロヲタか否かを見極める指標にもできそう!
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⑩ 恋のおスウィング
- 作詞:児玉雨子 作曲:星部ショウ 編曲:梅口敦史
お洒落でお上品なスウィング・ジャズにして「眼鏡の男の子」の別バージョンでもあって、メガネ男子に恋するライバルの視点で描かれてるの。役柄はなにも「眼鏡の男の子」に限った話ではないという意外な事実とアルバムの奥深さにさらにビヨへの興味が加速するわ!
シングルではないのでMVは存在しないとはいえ、役柄が頭に入っているからか映像も自然と浮かんできちゃうしでなんだかミュージカルを見ている気分に浸れるのよね。ビヨを知れば知るほど味わい深くなっていくという仕掛けだけど、音だけでも全然イケる♡
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⑪ 文化祭実行委員長の恋
- 作詞:星部ショウ 作曲:星部ショウ 編曲:板垣祐介
こちらも追加メン加入前から披露されていたアッパー系で演劇要素が濃く、赤羽橋高校の文化祭が舞台。役柄も「眼鏡の男の子」と同じ。LGBTに対して様々な意見が出るこのご時世に文化祭で「女装コンテスト」とかやると色々言われるみたいだけど(個人的には全然容認派)、実行委員長が恋する美形男子はアタシの好みではないのよね〜。夢羽を丸刈りにして「坊主の男の子」とか「野球部の男の子」とかやってほしい!
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⑫ 元年バンジージャンプ
- 作詞:星部ショウ 作曲:星部ショウ 編曲:星部ショウ
巷でウワサのシティ・ポップを星部ショウがアイドルソングとして仕上げた後半のハイライトとも言える超名曲キタ。令和元年デビューのビヨならではの強力なメッセージはヲタのDNAを遠隔操作。強制的にポジティブ思考へと変換させるわ。「ニッポンノD・N・A!」にも通じるメッセージ性だけど、でもセリフを聞くと「眼鏡の男の子」がまだ続いてる。
「令和元年も終わりだし来年はどう歌うの?」なんてボヤきは禁物。今できることに着目するのがビヨ流。そんな暇あったら元年中にやりたことに着手よ!・・・なんてエラそうなことを書きながら気付いたんだけど、この曲はあくまでも平成生まれへ向けてのものであって昭和生まれは「アウトオブ眼中」。この死語をリアルで使ってたオッサンは対象外っぽいw
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⑬ 恋愛奉行
- 作詞:三浦徳子 作曲:星部ショウ 編曲:大久保薫
ホント名曲が飛び出す飛び出す!こちらも超愉快なユーロポップで「恋に悩める乙女の駆け込み寺」みたいな描写がダブルユー「Missラブ探偵」(2006年)を想起させるわ。不動産かなんかのTV-CMの決めゼリフをパロちゃうおフザケといい、音といい、聴きながらふとダブルユーっぽいなと思ったの。今作のハチャメチャ感ってダブルユー的なんだと気付いたわ。
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⑭ GIRL ZONE
- 作詞:大森靖子 作曲:大森靖子 編曲:大久保薫
- Performed by 雨ノ森 川海
シングルのカップリングとして発表済みの「雨ノ森 川海」によるユニット曲は大森靖子の快作。「良く言えば個性的な顔立ち」の女子が表面しか見ない男子へ不満を募らせるという、道重さゆに憧れると当時に湧き出た靖子の負の感情が焦点(?)。そもそもは小劇団のイメージで結成されたユニットらしいけど、ビヨ全体がそういうイメージなんだけど違うのかしら。
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⑮ 都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて
- 作詞:星部ショウ 作曲:星部ショウ 編曲:清水信之
- Performed by CHICA#TETSU
シングルのカップリングとして発表済みの「CHICA#TETSU」によるユニット曲で、「高輪ゲートウェイ駅ができる頃には」同様に駅がキーワードの超絶ポップ。このユニットは「身体表現へのアプローチを通じたパフォーマンス集団」とのことだけど、CHICA#TETSUのリーダーにしてガチの鉄道ヲタ:一岡さんが楽しければいい、という認識は違うようね。ちなみにビヨ全体のリーダーは決まってないそう。
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⑯ Go Waist
- 作詞:Henri Belolo/Victor Edward Willis/日本語詞:児玉雨子
作曲:Jacques Morali 編曲:大久保薫 - コレオグラファー:熊谷拓明
デビュー・シングル3曲目は洋楽のカバー曲で、オリジナルはVillage People(ビレッジ・ピープル)1979年の「Go West(ゴー・ウェスト)」。一言で言えば「ゲイが世に理解を求める」といった楽曲で、その後1993年に英エレクトロ・ポップ・デュオにしてガチホモ・デュオ:Pet Shop Boys(ペット・ショップ・ボーイズ、以下「PSB」)がカバーして世界的大ヒットに。なので一般的に知られてる「Go West」と言えばPSB版なはず。
ウフフ♡ アタシ詳しいでしょ? だってPSB大好きだもん♡
そしてこのビヨ版もPSB版をお手本にしたはずなのよね。というのもビヨ版でいう「世は不平等・・・好きになりたい」の部分はPSBがカバーする際に新たに追加したパートなので。そこへさらに今回ビヨがカバーするにあたって「West→Waist」とし、ウエストを捻ろだなんだのとセリフパートも追加し、ついには原型が何についての曲だったか忘れちゃうくらいのエアロビクス・ソングに仕上げてしまった・・・ってワケなのよw
Pet Shop Boys版「Go West」は彼らの5thアルバム「Very」に収録。全12曲が名曲揃いの超絶ポップアルバムなので、ビヨヲタはそちらも聞いてね♡
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⑰ 伸びしろ 〜Beyond the World〜
- 作詞:星部ショウ 作曲:星部ショウ 編曲:鈴木俊介
ウチらまだまだビヨ〜ンって伸びまっせ〜!と今後のビヨを予感させ、3連バラードから舞台の大団円のような壮大なエンディングへと盛り上がるアルバムの最後を飾るには持ってこいの1曲。奇想天外な楽曲が並んでいるおかげでこの着地点はなんだか予定調和とも言えなくもないけど、でもそれだけビヨの個性が強烈な証。伸びしろに大いに期待よ!
CD
- OOOOOVERTURE
- アツイ!
- ニッポンノD・N・A!
- 高輪ゲートウェイ駅ができる頃には CHICA#TETSU
- We Need a Name! 平井美葉・小林萌花・里吉うたの
- そこらのやつとは同じにされたくない雨ノ森 川海
- きのこたけのこ大戦記
- 小夜曲“眼鏡の男の子”
- 眼鏡の男の子
- 恋のおスウィング
- 文化祭実行委員長の恋
- 元年バンジージャンプ
- 恋愛奉行
- GIRL ZONE雨ノ森 川海
- 都営大江戸線の六本木駅で抱きしめてCHICA#TETSU
- Go Waist
- 伸びしろ~Beyond the World~